『走らんかい!』中場利一著 2010
3/15
月曜日

 特に用向きもなく、定時退社しスーパーで買い物をして帰宅した。飯粒より納豆粒が多い主食と、もやし+ワカメ+油揚げ味噌汁のディナーで空腹を満たした。この基本セット晩ご飯は7年続いている。おお、ほうれん草99円もあった。家で肉類を食べることは滅多にないが、身の程をわきまえれば、これでいいのだ。

 さて、僕が24歳で大阪の岸和田は春木駅近くの独身寮に住んだことがある。1986年のことだ。その頃、ほとんど寮にはいなく、特定の別宅をねぐらにしていた。同僚のIさんが「今年よー、だんじり曳けやしよー、あのよー、パッチ(股引)と地下足袋だけ、こうたらええさけぇ、法被は貸しちゃるからよ・・・」と有無も言わさず、即決即断で決まり、生まれて初めて岸和田だんじりを見るのと同時に前綱を握りしめ、全速力で「そーりゃー、そーりゃー、そーりゃー」と曳いた。「突っ込めぇーー、いてまえぇーー」の世界だから、直角曲がり角なんかあれば、水を得た魚のように全員が突っ込んでやりまわしていく。直角コーナーは「カクカクカックン」と梃子を入れる専門職もいて全速力で一気に駆け抜ける。まあ、ご覧になった方も多いでしょうが、勇ましいもので、岸和田の連中は赤子の頃からだんじりの中で育っていくから、9月の祭りに向けて集中力を高め、闘志をむき出しにしながら、楽しまなきゃ損損のノリで全エネルギーを祭りに注入する。学校なんか全部休みだからね、祭りの時に学校なんかいくやつ、だれもいないし。これはいい経験をしたし、楽しめたし、血が騒いだし、街ぐるみで盛り上がっていた。二日間戦闘態勢で曳いたその後の筋肉痛は尋常じゃなかったけれどね。

 さて、ヘッドラインの話題、ちゅんば(中場利一のこと)は岸和田少年愚連隊で衝撃的作家デビューをするが、この愚連隊各xx篇は全部読んだが、その笑いと人情とケンカ三昧の波瀾万丈・無茶苦茶人生に引き込まれ、おかしくて涙なくしては読めないからね。今回の「走らんかい!」は少し説明がくどく、無理矢理笑いをとろうとしているきらいがあるにはあるが、岸和田独特のしゃべりが僕にはとても懐かしくて、威勢があって、好きだな。今でも「わっしょーー(あらま、どうしましょう的意味)」「おっ、ワレ!」と口から迸るのは、岸和田で揉まれたせいでもあるな。(2010/03/15 22:44)

単行本: 273ページ
出版社: 集英社 (2010/2/26)
言語 日本語
ISBN-10: 4087713423
ISBN-13: 978-4087713428

内容紹介

ベストセラー『岸和田少年愚連隊』シリーズの著者が満を持して書いた、だんじり小説。ケンカもする、煙草も酒も飲む。でも一緒にだんじりを曳く仲間は絶対裏切らない、だんじりのためなら命もかける。岸和田中之濱青年団を舞台に描かれる肉食系友情物語。「不良」「友情」「男気」、エンタメ界のヒットの条件揃い踏み! の傑作です!!気まぐれな父親と隣町から岸和田・中之濱町に越してきた高校生の大和。小さな頃に住んでたというが記憶にない。引きこもりの大和にとって、ヤクザのような男たちが闊歩するこの町はとにかく怖くてたまらなかったが、隣に住む同じ歳の漁師ケンタに青年団に入れと誘われる。青年団とは、17~25歳の男子で構成される町会。祭りの時には、綱を曳き、だんじりのエンジンとなってひたすら走る。上下の規律も厳しい。ガラの悪い青年団に腰が引けていたが、喧嘩も覚え、立派な中之濱青年団の一員となった。そんな時、同い年の七海と恋をした……。大切な人との別れと大切なものとの出会いを経て、少年は「男」に成長する。


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