『流れよわが涙、と警官は言った』フィリップ・K・ディック 2010
2/15
月曜日

 P・K・Dの19冊目読了は『ながれよわが涙と警官は言った』、1974年の長篇作品である。また、書名がカッコイイではないか。内容は、自分の特番を毎週放映し、三千万の視聴者、ファンがいるジェイスン・タヴァナーが、あることから、まったく無名の誰も知らない人間になっていたことから話しは展開する。

 本文から、これがこの本篇のテーマではないのだけれど、なんとなく、そうだよな、ウン、と賛同する部分を抜粋。ルース・レイがジェイスンに語ることば。『哀しみは自分自身を解き放つことができるの。自分の窮屈な皮膚の外に染み出すのよ。愛していなければ哀しみを感じることはできないわ-哀しみは愛の終局よ、失われた愛だものね。あんたにはわかっているのよ、わかってると思うわ。でもあんたはそのことを考えたくないだけなの。それで愛のサイクルが完結するのよ。愛して、失って、哀しみを味わって、去って、そしてまた愛するの。ジェイスン、悲しみというのはあんたがひとりきりでいなければならないと身をもって知ることよ。そしてひとりきりでいることは、生きているものそれぞれの最終的な運命だから、その先にはなにもないってことなの。死というのはそういうことなの。大いなる寂寥ってことよ。・・・・』

文庫: 375ページ
出版社: 早川書房 (1989/02)
ISBN-10: 4150108072
ISBN-13: 978-4150108076
発売日: 1989/02

内容(「BOOK」データベースより)
三千万人のファンから愛されるマルチタレント、ジェイスン・タヴァナーは、安ホテルの不潔なベッドで目覚めた。昨夜番組のあと、思わぬ事故で意識不明となり、ここに収容されたらしい。体は回復したものの、恐るべき事実が判明した。身分証明書が消えていたばかりか、国家の膨大なデータバンクから、彼に関する全記録が消え失せていたのだ。友人や恋人も、彼をまったく覚えていない。“存在しない男”となったタヴァナーは、警察から追われながらも、悪夢の突破口を必死に探し求めるが…。現実の裏側に潜む不条理を描くディック最大の問題作。キャンベル記念賞受賞。


Copyright (C) 2010 Shougo Iwasa. All Rights Reserved.