『去年を待ちながら』フィリップ・K・ディック 2009
12/28
月曜日

 P・K・Dの17冊目読了は1966年の長篇『去年を待ちながら』。ちょっと破綻したストーリー的ではあるのだけれど、彼贔屓としてはお許し願いたい。

 宇宙戦争に巻き込まれてしまった地球、それを救おうとする国連事務総長モリナーリと、彼を助けようとする人工臓器移植医エリック・スイートセンの苦悩の物語。主人公エリックと妻キャッシーの愛憎劇も織りなしているところは読みどころ。

 それでね、あまり頭がシャープだと矛盾点ばかり見つけようと躍起になるから、そこいらは蚊帳の外に置いておくのが得策だね。あるドラッグを服用して、カプセルを飲んだら、人によっては過去に、またまた、未来にタイム・トラベルする。横軸に位相が捻れる人もある。プロットはばらさないけれど、10年ほど未来に行ったエリックと、その本人がそのまま生活し続けているエリックが会って相談するみたいな、・・・んなことあり得ないだろう、なんて考えちゃいけませんね。ディックらしいご都合主義の展開もあるけれど、男と女の関わり合いが悶々としていて、かなりアリティがある。ディックは生涯で5回の結婚と離婚を繰り返す経験が活かされているのだろうね。それでもって、何でもありのSFなんだから楽しめれば充分じゃないか。(2009/12/28 17:44)

文庫: 410ページ
出版社: 東京創元社 (1989/4/21)
ISBN-10: 4488696015
ISBN-13: 978-4488696016
発売日: 1989/4/21

内容(「BOOK」データベースより)
2055年。地球は国連事務総長モリナーリをトップに星間戦争の渦中にある。モリナーリは、死しておな蘇り、熱弁をふるい人々を鼓舞する最高権力者だった…。ある日、モリナーリの専属担当を要請される人工臓器移植医エリック。そしてエリックの妻キャサリンは、夫との不和から禁断のドラツグJJ180を服用してしまう…時間と空間が交錯しはじめた。

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