森のめぐみのデザインスクール(2) 2009
12/27
日曜日

 港区が主催する『森のめぐみのデザイン運動』のスクール2回目は、講師に”レーベルクリエイターズ”の熊谷有紀さんをお迎えしての、”デザイナー視点からみた”レクチャーだった。このレーベルクリエイターズのコンセプトは現場で出る端材(本来は捨ててしまうようなもの)に光をあてて、その樹種のもつ素材を活かす製品を生み出している。

 彼女は、実家が材木屋であり、今でも月の半分は材木の販売を手がけているだけあって、子供時分から木には慣れ親しんでいるのであろうし、謙虚で誠実なスクールだった。これから僕たちの作品をカタチにして頂く上で、具体的にどういったことを決めていくのか、どんな樹種で、仕上げは、接合は、とディーテイル化していかなきゃいけない。そのために知っておくべき導入部分、切り口といった観点でのお話で進められた。

デザインの進め方と例として、
デザイナーとして大切にしていること
●唯一の価値をつくる
●素材技術、プロジェクトの特徴を最大限に引き出し、時間に淘汰されないよいモノとコトをつくる
●責任を持つ
 -生産地、購買者、販売者、未来、etc

 そのために、
●丁寧なリサーチ
●試作、根気づよく的確な検証・確認
●商品化された後の更新

 内容はそれぞれかみ砕いて説明してくださったが、昨日の清水氏といい、今回の熊谷さんといい、実に謙虚で誠実で、傲ったところがまったくないですね。

 デザイナーだからといって、ふんぞり返るのではなく、例えば工場まで足蹴に通って、試作の段階でも絶えず多くの人の意見を聞いては試行錯誤を繰り返す。また、直接関わらないことでも興味を持って、情報を集めるアンテナを高くし、そういった蓄積を怠らない。好きだからこそ出来るのであって、好きなことを職業にするのは幸せなことでしょうね。そうであれば、絶えず、’気にかけている、気にしている’ことが何かの仕事の折に役立ち、そして、ぴたっぴたっとパズルを填め込むように合わさっていく、いいじゃないか、ってことですね。 

 講師の熊谷さんがどういったプロダクトを生み出してきたのか、紹介を含めて、その製品の背景にある部分に斬り込んだ紹介があった。

○KUMIKO(照明器具)・・・組子(くみこ)細工を使った照明
○KIKORO(ジュエリー)
○KIGI(コースター)・・・床材の端材を用いたコースター
○TSUNAGU(家具)・・・素材と技術を繋ぐ、技術を伝承していくこともコンセプトにある。化粧合板の端材を使った椅子、樹種が不揃いなこともデザイン上のアクセント、コントラストを成している。
○DANDAN BATAKE(プランタン)・・・more treesの依頼により製作した無垢の杉材を使用、最終は土に返ることまで意識している。

 「プロジェクトの特徴を捉える」として、
○間伐材を使用する。
○新たなカーボンオフセットをしなくてすむようなしくみを考える。(木を使うこと、CO2を固定することがイコールであること)
○なるべくたくさんの人に長く使ってもらえるもの
○たのしいこと
~木の場合~
○ひとつずつ違う
○伸縮する
○反る
○調湿機能がある
○香りがよい
○経年変化が美しい

「ディーテイルを考える」として、
○樹種(産地、天然乾燥か、自然乾燥か)
○杢目(もくめ)→活かし方
○接合法法→留め加工、雇いざね、ダボで接続、紐、かぎあわせ
○仕上げ方法→オイル、漆、ウレタン、蝋密、etc

 ところで、板は’木が反る’と書く。そもそも、木は反るのです、動くのです、呼吸をするのです、生きているのですからね、だから個人的にはニスなんかで呼吸を止めてしまうような塗装は僕は好きじゃないね。余談だけれど。
 それで、
・無垢材と木質系材の特徴(無垢材、集成材)
・MDF(木を粉末状に砕いて接着剤で固めたもの)
・天然乾燥と人工乾燥の違い
・「背割り」をして、木を暴れさせておいて(反らせておいて)乾燥後に加工する。
・板目(木表部分)、柾目(年輪に直角な面)
なども教わった。実りあるスクールでしたね。次回は、1月16日、午前、午後の2コースが楽しみ。ああ、自分の木工作業場所がほしい、トリマーやルーターをぶん回しても苦情が出ないような場所がね。(2009/12/27 19:29)


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