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フィトンチッドって? 2009
11/27
金曜日

 日曜日に森林セラピーとして奥多摩に出かけるのだけれど、その前に紹介された『森を歩く 森林セラピーへのいざない』を読んだ。その中で、フィトンチッドについて軽く触れたい。文中から。(2009/11/27 6:48)

 フィトンチッドそのものは、1930年頃にロシアのボリス・トーキンが発見した揮発性物質である。植物を傷つけるとその周囲に存在する細菌などが死滅する現象に気付いたことがきっかけだった。これは、植物が何らかの揮発性物質を放出したために起きると勧化手、その物質にフィトンチッドという名を付けた。「植物」を意味する“phyto”と「殺す」を意味する“cide”から作られた言葉である。フィトンチッドを直訳した言葉としては「植物殺菌素」という語が使われたこともある。

 今では、植物が発生する揮発性の物質の総称と定義づけられている。具体的には、テルペン類だ。この物質は、炭水化物の一種であるイソプレイン(C5H8)ユニットを含む天然化合物の一群である。もっとも、講義にはテルペン類以外の揮発性の低い物質を含むこともある。

 フィトンチッドには、樹木自身を護るための働きがある。たとえば昆虫や動物が葉や枝を食べるとフィトンチッドが発生し、苦みなどを与えて摂食阻害を引き起こす。さらに食べられる前に昆虫や微生物を忌避させ、殺虫、殺菌する効果があるとされる。最近の研究では、フィトンチッドの一つである青葉アルデヒドに、害虫の天敵を呼び寄せ、病原菌に対する抵抗を高める免疫力があることも実証された。一方で隣の木に警報を与える役割があることまでわかってきた。つまり木々のコミュニケーションをフィトンチッドが担っているのだ。

 まさに動けない樹木が、外敵や自身のライバルとなる動植物と戦い、周囲の同族と連携して身を守るために発散するのがフィトンチッドなのだ。

 このように紹介し、しかも「植物殺菌素」などという訳語を示すと、人間にも毒性を発揮するのではないかと心配になるが、人間に対しては多くの場合リフレッシュ効果など有益な役割を果たすとうのだから不思議である。

森を歩く―森林セラピーへのいざない (角川SSC新書カラー版)
4827550662

内容(「BOOK」データベースより)

近年、耳にするようになった「森林療法」や「森林セラピー」という言葉。これまでは感覚的にしか捉えられていなかった森の持つ力を、科学的に解明しようという研究も始まった。そのひとつが林野庁を中心とした「森林セラピー」事業。2009年3月現在、全国に31カ所の森林セラピー基地、4カ所のセラピーロードが認定されている。本書では森林療法の成り立ちや施術の方法だけでなく、ドイツのクナイプ療法についても紹介、森林が人を癒す仕組みについて考察した。さらにおすすめの森林セラピー基地10カ所もルポ。

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