『ティモシー・アーチャーの転生』フィリップ・K・ディック 2009
11/13
金曜日

 ほぼ毎日、7:30~8:00の間に会社近くのカフェに着いてはコーヒーを啜って物思いに耽っている。ずっとだ。さて、数十ページ残っていたフィリップ・K・ディックの14冊目『ティモシー・アーチャーの転生 (1984年)』を読了。これは彼の遺作となっていて、『ヴァリス』、『聖なる侵入』とともに3部作をなしている。しかし、これは話の流れが淡々としていて、奇抜さや、手に汗握ることなく(SF作品じゃない一般小説)集中力を保つのに苦労する。要は、あまり、話に熱中していけない。物語はまさにジョン・レノンが凶弾に倒れた僕にも忘れることが出来ない日の書き出しからはじめっているけれどね、ロックの話題もところどころあるけれど、宗教的なキリストやモーセ、いろんな話も織り合わさっているし、僕の頭の構造では難解というのか、著者の頭の構造は普通の一般人を遥かに凌駕するには充分な知識力と博学さが垣間見れるしね。文章は平易な言葉なのだけれどね、本の中身に引き込まれなかったんだ。ちと残念かな。

 少しばかり文中から拝借すると(ここは僕もおお、そうだと思った部分)「・・・・これはおそらく、わたしたちが”運命”という言葉で意味するもののことだ。不可避のものがなければ、わたしたちはその言葉を用いないだろう。そうするかわりに、運命について言うだろう。偶然について語るだろう。運命があれば偶然はない。そこには意志がある。そして無慈悲な意志が存在し、さながら人間の宇宙そのものが縮んでいるように、あらゆる方向から同時に人間をつつみこんでいる。無慈悲な意志は最終的に、ただ人間と人間の恐ろしい運命だけを支配する。人間は自分の意志に反して屈服するようプログラムを組込まれ、自由になろうとする努力のうち、疲労と絶望から、さらに早く屈服する。そしてどうあっても、運命が勝利をおさめる。」 どう?的を得ていると思うでしょ?(2009/11/13 8:42)

内容紹介:キリスト教の教義を疑い、真実を求めて古代文書を解読していた高名なアーチャー主教は、そのために地位を失い、ひとり死海へ旅立ち消息を断った。だが……。ジョン・レノンが死んだ日、主教をよく知るエインジェルは一部始終を語りはじめる。鬼才作家ディックの遺作となった名作。『ヴァリス』に始まる、死と救済をめぐる三部作の完結編。


文庫: 354ページ
出版社: サンリオ (1984/10)
ASIN: B000J712XI
発売日: 1984/10

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