浅田次郎著『月下の恋人』 2009
9/25
金曜日

  僕には浅田次郎著の本は3冊目となった先日発売されたばかりの「月下の恋人」を読んだ。アマゾンのカスタマレビューに”泣かせ屋・浅田”と書かれていたが、確かに、涙腺をユルユルにさせる卑怯な手口をこの作家は時折、かさこそと多用する。してまた、研ぎ澄まされた文体はプロの作家なのだろうと素直に認めざるを得ない。

 400字原稿用紙にして30枚程度の十一篇の短篇集で、このような短篇は時間の隙間埋め、暇つぶし的接着剤には丁度宜しい。短篇の間に紫煙をくゆらせ、啜るコーヒーのうまさは格別だ。その短篇ごとの余韻を自分の人生と拠り合わせてみたり、穿った見方をしやがって、と罵ってみたり、それなりの余韻も副産物として生成する。ひとりごちだ。そのような感慨に耽ってみたりするのも悪くはないのだよね。

(構成)
 ・情夜
 ・告白
 ・適当なアルバイト
 ・風蕭蕭(かぜしょうしょう)
 ・忘れじの宿
 ・黒い森
 ・回転扉
 ・同じ棲
 ・あなたに会いたい
 ・月下の恋人
 ・『月下の恋人』補遺

 恋人、夫婦、友達、過去の柵、親子と採り上げているテーマは平凡だけれど、弄り方が尋常じゃないんだな、これが。「情夜」「告白」「忘れじの宿」、これには参るね、くれぐれも人前で読まないこった。いいかな?

 内容(「BOOK」データベースより)
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
浅田 次郎
1951年東京生まれ。’95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、’97年『鉄道員』で直木賞を受賞。2000年には『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

文庫: 302ページ
出版社: 光文社 (2009/9/8)
発売日: 2009/9/8

じゃ。(2009/09/25 20:17)

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