『時間飛行士へのささやかな贈物』-フィリップ・K・ディック- 2009
9/8
火曜日

 今日は、活字中毒症と、ロック渇望症が入り混じり、それらの欲望を満たすため、途中下車してまで、ヘッドラインの本の後半を読み切った。Buckcherryのロックをガンガンと脳の中枢部へ流し込みながら、実に幸せな時間だった。

 僕にはP・K・Dの11冊目にあたる『時間飛行士へのささやかな贈物』だった。これは1977年にジョン・ブラナー選によって刊行された短編集「THE BEST OF PHILIP K. DICK」の訳書(二分冊の下巻)。この短編集は1983年にサンリオSF文庫から翻訳が出版されているが現在は絶版となっており、本書は1991年にハヤカワ文庫から訳を改めて新しく刊行されたもの。1950年代と1960年代の作品が各々4編、1970年代の作品が1編と、ほぼ年代順に編まれたオリジナルの後半部分を収録している。尚、二分冊の上巻は「パーキー・パットの日々」のタイトルで同じくハヤカワ文庫から刊行、オリジナルの前半部分を収録している。

1.The Father-thing 父さんに似たもの (1954) 大森望・訳
2.Service Call アフター・サーヴィス (1955) 大瀧啓裕・訳
3.Autofac 自動工場 (1955) 大瀧啓裕・訳
4.Human Is 人間らしさ (1955) 友枝康子・訳
5.If There Were No Benny Cemoli ベニー・セモリがいなかったら (1963) 大瀧啓裕・訳
6.Oh, To Be A Blobel! おお! ブローベルとなりて (1964) 浅倉久志・訳
7.Faith Of Our Fathers 父祖の信仰 (1967) 浅倉久志・訳
8.The Electric Ant 電気蟻 (1969) 浅倉久志・訳
9.Little Something For Us Tempnauts 時間飛行士へのささやかな贈物 (1974) 浅倉久志・訳

・No.7の父祖の信仰は圧巻だ。この人の切り込みと洞察は底なしだし、こんな発想はどこから湧き上がってくるのかしらん・・・
・No.8の電気蟻も自分が精巧なアンドロイドであることを判らずにいた。ある日、事故でそれと気付くのだけど、それで自分を試行錯誤しながら破壊していくって話。
・ No.9の時間飛行士へのささやかな贈り物は、P・K・D流の宇宙開発への警報でもあって、時間軸ループに囚われたタイムト・ラベルのパラドックスに陥ってしまう話。

 明日からは、グラーグ57を読むぞ。これはチャイルド44の続編で、今、本屋で平積みにされている。上下巻で760頁の長編だね。ワクワクするわよ。(2009/09/08 22:37)


文庫: 381ページ
出版社: 早川書房
発売日: 1991/01
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカで行なわれた国家的なタイム・トラベル実験で、タイム・トリップ中に爆発事故が起きた。ひとつの空間に同時に複数の物体は存在できないという原則を破ってしまったらしい。時間飛行士たちの運命は…。表題作。ある日チャールズは、ガレージにいる父親がふたりになっているのに気がついた…。「父さんに似たもの」など、読む者を現実と非現実のはざまへと引きずりこむ、名手ディックならではの悪夢にみちた9篇。

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