『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』フィリップ・K・ディックを読んで 2009
8/29
土曜日

 朝、7時からミスドで、残り55ページを慈しむようにヘッドラインの本を読み終えた。

 フィリップ・K・ディックの訳者としては、大変旨いぞ、と唸る朝倉久志さんの文末の解説を読むと、このように描かれている。

 『ディックがアメージング誌の六三年一二月号に発表した「パーキイ・パッドの日」『ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック収録』という短編があります。 当時、バービー・ドールが異常なブームを呼んだことからアイデアを得たというこの短編には、ディックがよく扱う”過去と深く関わり合うことの危険性”というテーマが、明確にうち出されています。 比較してお読みになることをおすすめしますが、この短編が、本書『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』の原型であることは、間違いないでしょう。 長篇では、舞台がアメリカ西海岸から火星に移され、植民者たちがみじめな日常から逃避するために、幻覚剤を使って模型の世界にのめりこむ、というふうに手が混んできます。 そして、ディックがつねに追い求めているテーマである、”現実の相対性に関する考察”がこのへんから顔を出してくるわけです。』



文庫: 351ページ
出版社: 早川書房
発売日: 1984/12

 さて、これは、偶然に先日読んだ「パーキイ・パッドの日」の詳細版・続編・拡大版といった感じでとても楽しめる作品だね。 彼の代表作とされている1965年の長篇だけれど、全く陳腐化することなく、今でも脈々と通ずるるものがあるよね。 年月を経つにつれ、彼の予見の正しさがあからさまになってくるといえるのじゃないかな。 神・輪廻・自分の中にこそ本当の神が宿っている、テーマとしては”世界から逃避するのではなくて、その世界の真の姿を精一杯見極めることが必要”ということかな。 しかしながら、彼のストーリーテラーの絶妙さ、巧妙さ、人間心理の探求心、飽くなき掘り下げの執拗さ、正確無比さは、脱帽するしかなくて、僕の拙い感想じゃ、1%も表現は不可能だろうね。 我が儘で頑固な僕は、この作品を”読め”と強要したくなるよ。

 今日も良い天気だ。 大事な人とのんびりすごそう。 幸せな充実した一日が待っていることは疑うことはないよな。 じゃ! (2009/08/29 8:57)

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