『内なる宇宙』、最終章のユートピア 2009
2/23
月曜日

【上巻】 架空戦争に敗れた惑星ジェヴレン。その全土を管理/運営する超電子頭脳ジェヴェツクスは、一方で人々を架空世界浸けにし、政治宗教団体の乱立を助長していた。一指導者による惑星規模の大プロジェクトが密かに進行するなか、進退谷まった行政側は、ついに地球の旧き友、ハント博士とダンチェッカー教授に助力を求めるが…。

【下巻】 ある日突然人格が他者のものとすり替わってしまう―いたるところで奇異な現象が多発するジェヴレン社会に、ハント博士らは直面した。人格変容の起こった者はアヤトラと呼ばれ、新興宗教の活動家となるか、発狂してしまう。だがそれは精神異常の類ではない。人格はコンピュータ・ネットワークを通じて別の宇宙から送り込まれてくるという。ジェヴレンを狙う“内宇宙”とは何か。

 ジェイムズ・P・ホーガン、シリーズものハードSF、
 第一部『星を継ぐもの』
 第二部『ガニメデの優しい巨人』
 第三部『巨人たちの星』から10年のタイムラグを経てリリースされた本作品、いやはや、おもしろかった。全部(4部)で1、857頁、400字原稿用紙に換算して3,510枚の巨編だった。

文庫: 384ページ/出版社: 東京創元社 (1997/9) 文庫: 374ページ/出版社: 東京創元社 (1997/9)

  これ、感想を述べるのは難しいね。サイバースペースもの、でもなく、新しいハードファンタジー、巨大コンピュータによってもたらされる現実の生活とまったく区別の付かない架空の世界、架空の生活に浸るという快楽に溺れるジュヴレン人。新興宗教も織り交ぜながら、人工生命とは何ぞや。でも地球の過去の宗教が事実の歴史をもたらしているのもなまじっか、こんなことがあったのかもしれないよ、って感じ入ってしまう。四部作を通じて、流し込むように読ませ切る著書の独創力、想像力には脱帽しちゃうけれど、それにも増して訳者の池央耿氏にもすばらしい訳に感謝の意を捧げるね、ああ、充実の一時でしたね。ジェームス・P・ホーガンもお気に入り作家となったことは否定しようがない。

 じゃ。

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