2008年3月4日(火)
「ヒトラーの贋札」を観て、「ヒトラーの贋札」を読んで。

 2月28日のブログでも書いたが、ヒトラー・マネーを読んで<ベルンハルト作戦>、昨日、映画「ヒトラーの贋札」を観てきた。有楽町のシャンテシネで18:10上映分。昨年、12月22日で、映画⇔原作でも触れたが、今回のパターンは、(1)だが、少し、がっかりだ。決して、映画ができが悪いといっているのじゃなくて、原作アドルフ・ブルガーの言いたかったことが、伝わっていないように思えた。『ヒトラーの贋札』がベースなのだけれどね。この著者が言いたかったのはナチが、贋札を作った事実は、それはそれ、として、後生に伝えたかったのは、アウシュヴィッツなどの4カ所の収容所で「囚人」として、体験した<地獄>だったのじゃないのかな、と思う。「シンドラーのリスト」が囚人の模様をもう少しリアリティを持って、表現されているようにも思う。この映画もノンフィクションとは言え、完全じゃないのだけどね。

  アドルフ・ブルガー
熊河 浩訳 
朝日新聞社
2008/1/30 
2,300円 

 ”次回、紹介します”としていた、↑の本から、第一章:スロヴァキア-アウシュヴィッツ-ビルケナウの囚人として、体験を、是非、読んでほしい。この章だけでいいから、読んでほしい、図書館で借りてでも、私に連絡してくれてもいい、貸すから。

 こんなことが許されていいのか。いや、よくない。誰も救えなかった罪なき命、ナチの親衛隊も心から「悪]じゃないのかもしれないけれど、独裁者配下で、弾みと慣れが感覚を麻痺してしまうのか、たばこを一服するのと、囚人の脳みそをぶち抜くのと、何ら、変わりなく、こうもいとも簡単に、殺人できるものだろうか。あなただって、家族、子供、親類縁者がいるのだろう、って思う。自分かわいさ、人を虐げ、虐殺することで、自分も生き延びられると思ったのか、次に魂が生まれ変わって、地上に降りてきた時、過去に与えた、人々への償いとして、どんなことが待っているのか、魂を浄化するため、待ち受ける試練も考えられなかったのだろうな、悲しい。報いは受けろ、だろう。

 殴り殺されたり、重労働で衰弱死したり、病気・伝染病、窮まりない不衛生な環境、発疹チフスや、腸チフスの日常茶飯事の蔓延。

 日々、日常の中で選別される恐怖。女性は血色を少しでもよく見せるため、頬を叩き、親衛隊に、したくもない笑顔を見せる。何をしても、生き延びなければならない。あきらめた段階で、がくんと膝を折り曲げて、仕事の手を休めたとたんに、選別、つまり、「死」なのだから。

 興味本位の、あらゆる人体実験。

 子供の場合は、大人より体力がない分、もっと悲惨で、痩せこけ、皮が骨にへばり付き、炎症する。頬は痩け、穴が空き、そこから壊疽する。それでも、乏しい食事(餌といえばいいだろう)の時は、にっこり、笑顔を見せる。それを見守る囚人の大人達、だが、どうしてやることも出来ない。

 汽車で「家畜列車」も同然、運ばれて、到着するやいなや、「シャワーを浴びよう。」、と言われ、速攻、ガス室へ誘導された。効率よく殺すため、汽車の引き込み線は延長され、システマチックな毒ガス大虐殺をした。

 このような、惨い経験や、恐怖心を味わった人々、親から、子供が引き離され、または、目の前で銃殺された。生まれ変わったのなら、安らぎのある、幸せな、人を憎まず、思いやりのある、人間に生まれ変われている、と信じたい。そうじゃなきゃ、おかしいだろう。不条理だろ。何を正義に生きていけば、いいのか。

 毒ガスされているユダヤ人を見て、ニヤニヤできたナチ幹部の無神経さ、非情さが宇宙の遙か彼方まで突き抜けた、その地獄の心、奪った金銀財宝・美術品で、私利私欲に走る。抜いた金歯だけで、総量6トンにも達した。なんだろう、これって。地獄でも、地獄と呼ばれる空間があるとしても、囚人が受けた虐待よりは、お手柔らかにしていただけたのじゃないいか。

 焼却炉で焼けきれない死体は、穴を掘って処分した。囚人が、後始末をさせられた。
(抜粋)・・・しばらくすると、特別作業班の囚人がガス室の遺体を穴のところまで運び出していた。囚人が大急ぎで金歯を抜き取り、女性の遺体の髪を切る。それから遺体を穴の中に並べ、その上に燃料を重ねた。これを3回続けると、ひとつの穴あたり大体2500体の遺体が並べられる。これらの作業が終わってから、ようやく火をつけるのだ。しかし最初は激しく燃えていた火も、しばらくすると風の通りが悪いためにくすぶってくる。だから、休みなく油やメタノール、遺体から取った脂などをかけ続けなければならなかった。油と脂、焼けた肉のにおいが充満していた。・・・※(追記)穴には、死体から流れ出す脂を集める溝まで精巧に作られていたのだから。

・・・遺体がみな灰となるまでに、二時間かかった。火をつける前に穴いっぱいにあった遺体から残ったのは骨だけで、量も穴の三分の一程度までに減っていた。火が消えると、穴の中を冷やすためにまわりから水をかける。穴から白い湯気がしゅうしゅうと立ち上り、あたりをあたたかくしめった霧でつつんだ。表面が冷めると、囚人はブリキを打ち付けた板を投げ入れてその上に飛び乗り、まだ熱い灰を穴から出し始めた。・・・
 目を背けず、辛くても、もどしそうになっても、ちゃんと読んで、見てあげなければいけない。事実として、ちゃんと知っておく必要がある。くれぐれも、目を逸らしちゃいけない。(下の写真はクリックすると拡大します)

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