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 前ページの解説にもあるように、『零戦オタク』の僕から多少のフォローをしておきたい。

この松を見て、戦時中、”血の涙”を流して、お国のために・・・尽くした松さんを抱きしめたい衝動に駆られてしまった。

 皆さんもご存じのように天然資源の乏しい日本は戦時中、燃料補給路を絶たれ、東南アジア等に隘路を打破すべく行動したが、大東亜戦争も終盤になるに従い、輸送の船舶は漏れなく潜水艦等の攻撃を受け、撃沈・打破されることが多かった。ほぼ国内への燃料の路を絶たれていたのと同然であった。

 そこで、松から松脂を絞り出し、航空機燃料として使ったのだ。「松脂なんかで、飛ぶのかい?」って思うかもしれないが、シンプルなレシプロエンジンにはマッチするのでしょう。

 それで、零戦モノで坂井三郎の本を読んで記憶している中で、零戦は一番燃費がよい状態、プロペラピッチも燃料混合も適切であると、それでも1時間当たり、67(だったと思うが)リットルを消費する。これはベテラン搭乗員の話で、一般的な搭乗員では70〜80リットルの燃料を1時間で消費するだろう。

 いざ、戦闘となると、フル・スロットルとなるので、空戦中は、倍の燃料を消費する。ガダルカナルへラバウルから長大な足を持つゼロ戦でも往復の燃料を考えると、空戦できた時間はガダルカナル上空で15分程度だったと言われている。

 この松脂は全国の数万本、いや数十万本かもしれない松から一滴、ひとしずく絞り出されていた。みんな学童やら、一般市民がかき集めたのだった。

 それが、上の写真にもあるような、採取後が傷となっている。60年以上の前であるから、もっと細い松であったろうに。

 当時の海軍と陸軍は仲がよくなかった。力を合わせてやらなければならない時に、陸軍機、海軍機、例えばネジの規格から、あらゆるすべてのものが、敢えて違っていた。つまり、メーカ泣かせであり、ここいらの部品の共通化を図り、生産性を上げるなどの工夫をしていれば、もう少し、航空機を効率よく作り出せたのかもしれない。

 もう一つ、海軍がガソリンの精製過程では、多少オクタン価の高くなる精製法を知っていたが、そのノウハウさえ、陸軍に開示しなかったのである。愚かである。

 そんなことが、瞬間頭をよぎり、感慨深いものがあった。